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近畿学校保健学会50周年記念シンポジウム
―― 近畿学校保健学会の過去・現在・未来を語る ――
司会のまとめ
近畿学校保健学会50周年記念事業企画委員長 勝野 眞吾
(兵庫教育大学 教授)
本企画は近畿学校保健学会50周年記念事業のひとつとして第50回近畿学校保健学会(奈良)における近畿学校保健学会50周年記念シンポジウムとして設定されたものである。
記念シンポジウムを開催するにあたって企画委員会において数度の会議が持たれ、テーマを「近畿学校保健学会の過去・現在・未来を語る」とすること、シンポジストとして歴代幹事長をお務めになった上林久雄、武田眞太郎及び 林 正 の3先生、第50回年次学会長北村陽英先生、年次学会開催地奈良の養護教諭代表高田恵美子先生の5名、シンポジウムの司会進行を企画委員長の私が務めることとする骨子が決められた。
この記念シンポジウムでは、5名のシンポジストにそれぞれ異なった角度から自由に近畿学校保健学会の過去・現在それから未来を語っていただくことによって、本学会の50年の歩みが生き生きと、また立体的に浮かび上がると考え、堅苦しい報告形式をとらずむしろ座談に近いかたちで進行することとした。また、特にシンポジウムのためにレジュメは用意せず、50周年記念誌の冒頭に置かれる予定の「近畿学校保健学会50年の歩み―年表―」を資料とした。
上林久雄先生には、近畿学校保健学会設立前夜から学会創設、そして学会初期のあゆみについてお話をお願いした。上林先生は、戦後のわが国の子どもの健康問題、すなわち寄生虫感染、結核予防、姿勢の問題などを紹介され、このような健康課題解決を目指して近畿学校保健学会が創立された経緯を語られた。上林先生は、本学会設立の中心となった先達の先生方の視野にはWHO憲章や英国の包括的な健康理念Comprehensive Healthがあり、高い志のもとにこの学会が全国に先駆けて発足したことを紹介されるとともに、学会初期には、それぞれ一家言を持たれる先生方の群雄割拠の状態があり、本学会が人間くさい緊張感のなかで回を重ねた様子を間近におられた証言者として語られた。
武田眞太郎先生には医学、特に衛生学・公衆衛生学と学校保健の関わり、学校保健を支えてきたもうひとつの大きな柱である学校医、学校歯科医、学校薬剤師の本学会との関わりについてお話いただいた。武田先生はまず、医学部から教育学部に移られた個人史に沿ってお話を始められ、近畿では早い時期から「教育としての学校衛生(学校保健)」の視点があったこと、また近畿学校保健学会のメンバーが文部省等に対する「学校保健教育強化に関する建議」の中心的役割を果たしたことなどを紹介された。武田先生は、このように近畿から学校保健についての活発な発信が行われた当時、学校医、学校歯科医、学校薬剤師の三師もそれぞれの専門的な立場から学校保健に積極的に関与し、活気あふれる状況があったと話された。しかし、その後そのダイナミックな状況はむしろ衰退傾向にあることを指摘され、今改めて原点に立ち返り学校現場の抱える健康問題に対して対等で真剣な取り組みを行うことの重要性を説かれた。
第3代の本学会幹事長であり、また選挙によって選出された最初の幹事長でもある林 正 先生には近畿学校保健学会の学会としてのあゆみ、学会における研究の動向についてお話いただいた。近畿学校保健学会は発足20数年を経て、学会組織・運営を強化する機運が高まり、学会組織運営検討委員会が設立された。林 先生は、この検討委員会を中心とする議論の積み重ねにより新しい学会会則が制定され、学会事務所の常設と恒久的な会員制度の導入など、本学会が学会としての体裁を整えてきた経緯について順を追ってお話された。林 先生は、また学会初代幹事長を務められた上林先生が就任にあたって「片すみの日陰にある学校保健を日の当たる場所へ。本学会の使命は会員のための研究ではなく、真に子ども達の健康のための研究である。そのために大学、教育現場、地域いずれにおいても密接な連携を保ちながら真剣な取り組みを行う必要がある。」と挨拶されたことを紹介され、本学会が一貫して学校現場における子ども達の健康問題をテーマとし、「与えられた学会ではなく創る学会」を志向して討議を重ねてきたと話された。そして、このようなあり方こそ本学会の特徴であり、今後も受け継いで行くべきであると説かれた。
第50回年次学会長の北村陽英先生には、長年たずさわってこられた養護教諭の養成および卒後研修の視点から近畿学校保健学会について語っていただいた。北村先生は本学会が近畿地区の養護教諭の先生方の研究発表、研鑽の場としての役割を果たしてきた一方、この50年の学会の歴史のなかでまだ養護教諭が学会長を務めた例がないという事実を指摘された。次いで、わが国の養護教諭養成が多様で複雑な形で行われてきたことについて触れられ、わが国の教育行政の制度的な不備のなかで養護教諭が医学と教育の狭間で悩みながら、しかし、学校現場で最前線に立って子どもの健康問題に取り組んできた実態を話された。また、現職教員に道を開いた新しい大学院制度が養護教諭の卒後研修の観点からも意義があると話された。
最後に高田恵美子先生に、第50回年次学会の開催地奈良の地元の養護教諭としての立場から地域、特に奈良県における養護教諭と学校保健(健康管理・健康教育)、実践の視点からの近畿学校保健学会への期待と要望についてお話いただいた。高田先生は、学校現場における養護教諭の仕事がますます多様になり、養護教諭はますます多忙になっている現実を、健康相談活動、保健学習におけるチームティーチングなどの実例をあげて説明された。また健康管理面でもプライバシーへの配慮や新しい複雑な健康問題の出現、保護者への対応など、これまで以上に的確さと繊細さが必要とされるようになっていると話された。そしてこのような現実のなかで、養護教諭は「専門性を持った何でも屋」としてその役割を果たしたいと語られ、近畿学校保健学会は、このような多様な健康課題に取り組む養護教諭を支援するものであって欲しいと要望された。
5名のシンポジストのお話は短い時間にもかかわらず、それぞれ奥行きが深く、示唆に富むものであった。何よりも、本学会が近畿圏にあって、高い志を持ち、学校における子どもの健康問題に正面から取り組んできたことを改めて確認することができた。近畿学校保健学会に脈々と流れるこの伝統は、次の50年、100年の礎となり、本学会の大きな可能性を拓くものと思われる。
記念シンポジウムには多くの学会員が参加された。時間の関係から、参加されたフロアの先生方からは、ご意見、ご発言をいただくことができなかった。今後、様々な機会を捉えて、近畿学校保健学会のあり方についての議論が続けられることを期待したい。
――平成15年8月31日 近畿学校保健学会通信 .106 より――

50周年記念シンポジウム
向かって右から司会の勝野眞吾教授、コメンテーターの上林久雄名誉教授、
武田眞太郎名誉教授、林 正 名誉教授、高田恵美子養護教諭、北村陽英教授
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