近畿学校保健学会

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 近畿学校保健学会へのそのときどきの想い 第IV期
 

第50回近畿学校保健学会 学会長講演
児童・生徒への精神保健活動 過去30年あまりの経験より

奈良教育大学 学校保健研究室 教授  北村 陽英


昭和43(1968)年から60(1985)年の間、とある公立の中学校において生徒のための精神保健活動を行った。昭和60年から今日までは、地方公共団体教育委員会内で生徒の精神保健上の問題について、相談活動を行っている。これらの活動を行う中で、極めて多くの生徒の精神保健上の問題に遭遇し、その解決へ向けて学級担任、養護教諭、学校管理職、保護者さらに学校外部の医療関係者の協力を得ながら、ともに悪戦苦闘して来た。このような経験を通して、小学校中・高学年から高校生にかけての、いわゆる思春期・青年期の児童・生徒について精神的発達とその過程で起こる問題ならびにそれに対処するにあたっての困難について思い感じたことを述べておきたい。

1.思春期・青年期の発達課題を健やかにこなせる児童・生徒は少ない。でも少し長期的に観れば、悲観することはない
中学校在学中に、働きかけを直接的にせよ間接的にせよ、相談対象になった生徒は、在校生の3割あまりに及んだ。
思春期・青年期は第二自已主張期(自我の芽生えの第二期)として始まるが、それとともに児童・生徒は無意識の世界で発達課題をかせられている。それは、@第二次性徴に伴う体の変化と性的衝動を如何に自己の精神の中に内在化させるか、Aそれまでの上下の人間関係から、横の人間関係を作ること。言い換えれば他者の中におれる自已の確立あるいは社会性の発達、Bこの社会で自己が理想と思うことを実現して行くこと、である。上記の3割あまりの相談を必要とした生徒は、これらの発達課題に取り組み損ねているととらえることができた。これらの生徒に対して相談活動を行った結果、すべてがうまく行ったわけではない。しかし、ある種の問題(シンナー遊び)を抱えた生徒達の中学校卒業後の後追い調査を行ったところ、死亡事故例もあったし覚せい剤へ移行した例もあったものの、大部分の元生徒は卒業数年後にはシンナー遊びをしなくなり、新しく自己の生きる道を前向きに歩みはじめていた。

2.内にこもってしまう生徒が心配
不登校の生徒の多くが、内にこもってしまう、あるいは社会性の発達がうまく行っていないととらえうる。ただ学校へ行けば問題が解消したと思われがちだが、本当に社会性が発達していなければ、再び引きこもりとなってしまう。相談活動や保健指導をするとき、「社会性の発達」という視点から働きかけねば、本当の援助にならない。対人接触を拒否する生徒の数は非常に多く、生徒への学校保健
活動は効果を上げにくかった。長期に観て、これらの生徒の一部は20歳を過ぎても引きこもり状態にあることが予想され、単に登校させればよしというのではなく、社会性発達の視点からの支援をすべきと思われた。

3.学校教育のなかでの相談活動の困難とその打開策
教育の場は集団を対象にして教育を行う。相談活動は徹底的に個を観ることに始まり、相談活動は個を中心に据えて集団に対して働きかける形で展開する。この立場の違いが学校での相談活動を困難にしている。学校教育の場で、相談を要する生徒について、その生徒個人をよく知ったうえで、集団という学校教育の場へ働きかけができ、さらに外部の相談機関とも連絡のとれる教員は、生徒への理解力をもち同時に教育の場の事情もよく知っている教員、すなわち養護教諭である。また、そのような立場にある養護教諭をバックアップするものが必要である。


――第50回近畿学校保健学会講演集より――

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