近畿学校保健学会

AND OR   大文字と小文字を区別する  
ホーム
学会の目的・活動内容
会則/最新の学会通信
事務局からのお知らせ
次期学会について
入会ご希望の方へ
役員名簿
過去発表資料(表題検索)
学会通信(PDF検索)
50周年記念誌(表題検索)
リンク集
お問い合わせ


Powered by
kobe-u.com
 
 近畿学校保健学会へのそのときどきの想い 第IV期
 

第46回近畿学校保健学会 会長講演
家庭・学校・地域の連携が育む子どもの健康

和歌山県立医科大学 教授  宮下 和久


はじめに
現在の子どもの生活と健康の問題点として、子どもたちはゆとりのない忙しい生活を送っていること、自立が遅くなっていること、肥満傾向が進み、視力の低下や体力・運動能力の低下が著しいことなどが指摘されている。さらに、いじめ、不登校、凶悪化する青少年非行などの憂慮すべき状況、子どもたちの倫理感や社会性の不足、社会全体のモラルの低下などの状況等を背景として、幼児期からの心の教育を充実するとともに、家庭・学校・地域社会が一体となって新しい時代を拓く心を育てることの重要性が、中央教育審議会および教育課程審議会の答申の中でも強調されている。
ここでは、子どもたちの健康における家庭・学校・地域の三者の連携の重要性を地域保健の立場も踏まえながら論じたい。

教育における家庭、学校、地域社会
これまでにも増してこれからの教育の方針として「一人ひとりの個性を生かし、自ら学び、創り出す学力を育むこと、心豊かな子どもを育むこと、さらに、社会の変化に主体的に対応する子どもを育むこと」が着目点となろう。そのための新しい学校教育の試みとして、関連する教科を関連させた「クロスカリキュラム」や教科の枠をこえた「総合学習」が展開されようとしている。従来の学校内での学習に加えて社会資源を活用し、学校外での活動や地域社会に学習の場を積極的に求めることが期待されるが、その実践のためにはまさに、家庭・学校・地域社会の連携が重要となる。

子どもたちが育つ場としての家庭・学校・地域
子どもたちの生活・学びの場の中心は、いうまでもなく学校であるが、子どもたちの生活、学びの視点からすると、家庭・学校・地域社会それぞれに「学ぶ」場としての垣根はない。したがって、子どもを中心に見据えて、子どもに豊かな生活と学びの場を用意するという立場から、家庭・学校・地域社会の三者の関係を見直す必要がある。ところで、学校における子どもの教育に対する期待は、時代とともに大きくかつ肥大化してきた。しかし、学校主導あるいは学校依存の教育活動の展開の中で、学校教育を学校の外から支えるシステムは脆弱であり、いわば学校教育、学校運営基盤の補完的な役割として、PTA、地域社会の各機関、団体が組み込まれているにすぎない現状ではなかろうか?

学校保健を支えるシステム
子どもの健康問題として、大人の生活習慣病の予備群としての肥満傾向、体力・運動能力の低下などがあげられるが、その背景として食生活を含む生活習慣の重要性があげられている。さらに、子どもの心の健康を阻害する要因として、生活習慣に加え、組織活動の乏しさ、生活体験の不足、地域の関係性の乏しさなどが指摘されている。いづれも学校保健における主体管理中心の健康管理だけでは対応が困難であり、健康教育、学校保健組織活動を強化するとともに、それを実践するための学校―家庭、学校―地域の双方向の積極的な協働システムの構築が必要である。いづれにせよ、子どもの健康は生活の場である家庭と学校、学校をとりまく環境を形成している地域で見守り推進することが大切である。

学校から地域へ−健康管理のパラダイム・シフト

(1)学校が地域を育て、地域が学校を育てる;
子どもたちを中心に見据えて、広い概念として学び育つ場の主体は「地域」であると捉え、その「地域」全体が子どもたちの教育・健康の責任を負う。子どもの健康も「地域」の中で育まれる。

(2) 画一的方針から創意工夫をこらした方針へ;
学校教育は学校教育法や関連法令により包括的、個別的な要項が示され、平等で均等な教育機会、教育内容の提供が重視される結果、ともすれば画一的教育が展開される傾向にあった。ゆとりある教育、豊かな教育が叫ばれる中、「わが県の」、「わが町の」特徴を生かした創意工夫を凝らした教育方法、教育内容の展開が求められよう。子どもの健康に対する取り組みも例外でない。

(3) 遊びを通しての健康づくり;
子どもたちは遊びを通して多くを学び、育つ。子どもから老人までいろいろな世代の住まいする地域の中で、子どもたちが生き生きと「遊ぶ」ことによって、生活体験を豊かにし、互いに協力するこころ、態度を涵養し、心身ともに強くたくましい子どもが育つことになろう。

地域保健から学校保健へのアプローチ
子どもたちの健康を守る旗手は、養護教諭、保健主事をはじめとする学校保健プロ教諭集団だけではない。地域保健行政における市町村保健事業が充実された昨今、保健婦(士)、地域栄養士をはじめとする保健スタッフの充実、母子保健推進員、食生活改善推進員、近年では、介護支援専門員、介護福祉士など、地域における保健・福祉に関する人材が整備されつつある。地域保健行政では、生涯健康管理の実践として学校保健を業務の視野に入れ、医師会、学校、保健所、教育委員会と連携をとりながら積極的に学校へ働きかけている市町村もある。
学校と地域との連携をより強くするためには、地域保健の側からの積極的なアプローチが必要であろう。

おわりに
子どもたちとともに生活する地域で、子どもたちの視点で豊かに学び育つ環境を整えること−それが結果として家庭・学校・地域が育む子どもの健康へとつながっていくと考える。


図 A町の健康管理体系(地域と学校保健とのかかわり)


――第46回近畿学校保健学会講演集より――

近畿学校保健学会のホームへ
近畿学校保健学会事務所
〒657-8501 神戸市灘区鶴甲3-11 神戸大学発達科学部健康発達論講座
2004 © 近畿学校保健学会 All rights reserved.