近畿学校保健学会

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 近畿学校保健学会へのそのときどきの想い 第 III 期
 

第40回学会記念 招待講演についての座長まとめ
「学校保健活動の過去・現在・未来」

演者 大阪成蹊女子短大 教授  上林 久雄
座長 和歌山県立医科大学 教授  武田 眞太郎


本学会の第40回という記念すべき年を迎えて、猪尾学会長の発案で記念行事として招待講演が企画され、学校保健活動40年の歩みをふまえた21世紀への展望を、本学会初代幹事長を勤められた上林久雄先生から拝聴した。

本学会発足当時は疾病予防とくに結核対策が、学校における保健管理と保健指導の中心であったが、その後学校環境衛生が大きく取り上げられ、やがて、公害問題が表面化するようになった。そして、戦後のわが国の急速な技術革新と経済成長は、健康問題にも大きな変化をもたらした。経済成長に伴って、環境汚染だけでなく、肥満、飽食、拒食など食をめぐる問題や性にかかわる問題も表面化し、技術革新の結果としてファミコンの普及、運動不足、体力低下がもたらされた。また、出生率の低下、核家族化などによる生活環境の変容から精神的健康にも種々の問題が提起されてきている。さらに、疾病構造の変化のなかで、アレルギー疾患、小児難病、エイズなどの問題が出てきたし、医療技術の進歩とともに薬剤の副作用も大きく取り上げられてきた。

現在の学校保健活動でこれらの諸問題に対応していくためには、学校教育の重要な課題として、地域との連繋も強めながらの組織的活動が求められる。

このような認識の上に立って、いま問いなおすべき課題は、まず、健康の概念について再検討することである。健康は「自己実現」そのものであり、自然科学だけで理解できるものではなく、人対人の問題として教育する側のより一層の研鑚も必要で、全人的、包括的な概念である。この自己実現に努めることこそが、生涯学習の過程でもあり、生涯保健に求められているセルフケアでもある。したがって、人間教育そのものを学校保健活動の重点に位置づけるべきであるとして、本学会のより一層の発展を希望され、講演を結ばれた。

この記念講演を契機として、健康な子どもも病める子どもも、ともに「自己実現」をめざして、生き生きとした精神の躍動が期待できるような、健康な学校がこの近畿の地に数多く育てばと願っている。


――平成5年8月31日 近畿学校保健学会通信 No.76 より――

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