|
新しい学校保健の問題
京都大学 教授 宮田 尚之
周知のように、第2次大戦後、わが国では、従前の学校衛生が、学校保健と改名されて、健康のことが、教育の中に、大きく取り入れられました。そしてその後30年に近く、その間、学校保健そのものの、根本理念は、変っていないが、その実際的な具体的問題は、かなり大きい変化をしているのであります。
以下、その2・3を例示してみます。
(1) 当初は結核や寄生虫が最も重要な1つの問題でありました。そのためツべルクリン反応検査やBCGの接種、あるいは検便が具体的な学校保健の仕事でありました。しかし今では、それらは余り重視されず、むしろ腎炎、ネフローゼ、あるいは心臓病が問題となり、実際的には、検尿や心電図検査が大切になって来ました。
(2) 同様に、肢体不自由の問題でも、昔は、小児麻痺が多くありましたが、今では、自動車事故や骨折、外傷などが多くなっています。
(3) 栄養不良というと、以前は痩身(やせ)が主でありましたが、今では逆に肥満の方が重視されているのであります。
(4) 精神衛生上でも、はじめは、精神薄弱や精神病的なことが重視されていましたが、近年では、学校恐怖症(登校拒否症)、緘黙症、自閉症が問題の中心となっています。
(5) 環境衛生上でも、昔は照明、換気などが主な問題でありましたが、今では、オキシダントやレントゲン公害が問題化されています。
以上のように、知らず知らずの間に、学校保健の実際内容には非常に大きい変化が起っています。
そして、それらについて、最も根本的な違いと考えられることは、以前のそれらの問題は、従来より、医学がある程度の病理を解明していたことであって、学校保健は、その結果を利用すればよかったのでありますが、しかし現在の多くの問題は、医学では今迄にほとんど解明していないことばかりであって医学に余り頼れない実状であります。従って、これらは、われわれ学校保健の担当者達が、自らの手によって、それを解決しなければならないと言うことであります。従って、その事は、一面まことに困難なことでありましよう。しかし他面、それだからこそ、遣り甲斐のあることと存じます。よって、われわれが、力を合して、問題や実例をもち寄って、その中から、これを抽象考察する必要がありましょう。その場所こそが、この学校保健学会なのであります。
このような意味において、どうか今回の山田会長の第21回近畿学校保健学会に、ぜひ、多数ご参加賜りまして、亙によくご研鑚下さいますよう、心からお願い申し上げる次第であります。
――昭和49年7月25日 近畿学校保健学会通信 No.26 より――
|